研究概要 |
本研究では,記号計算の成果を活用することにより,整数計画問題の新たな解法を与える.新しく得られた研究成果は次の通りである. 1. アルゴリズムMGBAの提案 本研究では,整数計画問題,確率的整数計画問題,チャンス制約付き整数計画問題といった最適化問題を,次の3段階により解決する:(1)最適化問題を多項式問題に変換,(2)Grobner基底の利用により多項式問題を解決,(3)多項式問題の解を最適化問題の解に変換.このアイデアに基づく整数計画法の新たな解法として,MGBA(Minimised Geometric Buchberger Algorithm)というアルゴリズムを提案した.これは,HostenとSturmfelsが開発したGRIN法とThomasが開発した切断Grobner基底法とを組み合わせて得られるものである.新たに提案したアルゴリズムでは,Grobner基底を生成する集合を計算し,切断既約Grobner基底を生成する集合へと最小化することにより,効率化を図っている.MGBAを計算機上に実装し,既存の解法である幾何学的BuchbergerアルゴリズムやGRIN法のアルゴリズムとの比較を行なった結果,実行時間の大幅な短縮を確認できた. 2. ラベル付けアルゴリズムの実装 シンプレックス行列により表現される連立1次方程式が整数解を持つかどうかの判定問題はNP完全であることが知られており,効率的な判定アルゴリズムを作るのは難しい.この問題の解法として,整数ラベル付け規則と行列の三角化に基づくYangのアルゴリズムが知られている.本研究では,このアルゴリズムを実現するシステムILINを作成し,大規模な(500変数の問題を含む)整数計画問題の解を求める実験を行なった.ラベル付けアルゴリズムの実装に関する研究成果は,学術誌IEICEに公表済みである.
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