研究概要 |
個々の利用者の探索意図に応じて,情報断片の関係構造を動的に生成するための基本概念を提案し,関係分布モデルと名付けた.従来のデータベースは関係代数に基づく論理的なデータ操作を持つが,このモデルでは,利用者の主観的な視点の重要度に応じた情報の関連性の強弱で張られる関数空間上のデータ操作を持つように,情報幾何学のα-分布族による具現化を行なった. 但し,有限離散な計算機上での表現に対応した分布族に焦点を絞った. まず,本年度の主目的である提案モデルの性質の解明に関しては,有限離散分布族における混合型と指数型の部分多様体の自己平行性に着目して,em-測地線の関数空間中の線形性を示した.この線形性から,従来の勾配系の反復計算を必要としない,連立方程式による測地線の直接解法を導いた. また,応用上で生じやすい関連性の有無などで規定される2段階の基底関数の場合において,その測地線が低次元の部分多様体に極端に制限されることを明らかにした.これらの結果から,混合型と指数型の分布族の性質に関してはかなりわかってきた. 次に応用面では,指数型分布族で具現化された関係分布モデルのem-測地線によるデータ操作の意味を検討し,実験例を通じてそれらが有効に機能し得ることを示した. さらに,情報幾何学のα-分布族とマーケティングサイエンスの個人選考モデルとの対応関数を,関数クラスの観点から整理した.しかしながら,マーケティングサイエンスにおけるモデル選択は経験的かつ恣意的で,今後の研究の進展をはかる上で必ずしも有功でないと判断される. よって,αー分布族の数理的な性質を効率的な計算法という応用的側面から追求することで,別の切口からの検討を進める予定である.
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