研究概要 |
情報の関連性を操作することで利用者ごとの動的な構造化を行なう新しいデータモデルを考え,情報幾何学の種々の関数族上の測地線によって,意外性を秘かに期待した情報探索や利用者の視点の推定などが具現化できることを示してきた。本年度は,上記のモデルの理論的な性質の解明をさらに進めた。 まず,先に報告した自己平行性に基づく指数型および混合型分布族(α=±1)の線形特性を,より一般的な実数αに対して定義されるα-分布族において拡張し,α-分布族上の測地線の効率的な計算法を同様な方法で導いた。但し,自己平行でない場合の計算法に関しては今後の検討課題とした。 次に,α-分布族のパラメータ推定問題が,ニュートン法によるα-ダイバージェンス最小化と等価な勾配系で表されることに着目して,類似した勾配系を持つニューラルネットの学習を高速化する一般化対数を用いてα-ダイバージェンスを表現することで,実数αの値に従った勾配ベクトルの強調効果を定性的に議論した。また,この推定問題においてαの値を変化させるとき,その勾配軌跡の遷移が,α-分布族に対応するファジイ平均演算子の関数空間の葉層中で捉えられることを指摘した。 さらに数値計算によって,種々のαの値に対する勾配系の収束速度やその収束点が与える推定値(パラメータ値や関数値)の特性を定量的に示した。その結果,不連続なα=1の両側付近では極端に収束が遅くなって数値的にも不安定(数値的発散)なことを除いて,他は全てほぼ同じ収束速度を持ち,αの値に従って推定値が連続的に変化することがわかった。
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