現在研究を進めている不可能物体は、複数の視点から見た形状をまるで1つの視点から見ているように観察者に錯覚させることによって生じる。そこで、コンピュータ内に複数の3次元空間を同時に定義し、同時に表示することで不可能物体を表現する方法を考案した。この方法を実行するにあたり、まず問題となるのが、複数の空間同士間での隠面処理である。当初の予定では、不可能物体の形状構造によって分類を行い、それらの構造毎にルールを定めて隠面処理を行うことを計画していた。ところが、この方法では、正確に処理をできない部分が出てきてしまうため、表示面の優先順位リストを作成する方法に変更した。この方法は、通常の奥行きによる隠面処理を適用できない面同士、すなわち観察者に錯覚を起こさせる面同士に、どちらを優先して表示するかを定義するものである。通常の奥行きによる前後判定ができる場合でも、このリストに記述されているものについてはその内容を優先する。不可能物体の接続部分の形状構造によってリストに記述する必要のある面の数が決定するが、その数は限られている為、現在のところリスト作成の手間についての問題は発生していない。さらに、回転角の制限範囲毎に隠面処理の優先順位を定めるように記述方法を工夫したことによって、不可能物体の回転に伴う動きの制約を大幅に減らすことができた。 この方法を考案したことで、これまでより隠面処理にかかる手間が減少しただけでなく、不可能物体の回転移動の制限を減少させるという効果が得られた。
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