研究概要 |
本年度の計画は.回転錯視解析システムを自動化(回転対象をパルスモーター駆動)すること,また,このシステムをパソコン上でシミュレートする,すなわちモニター上で,回転対象を回転させるシステムを試作して,両者の相違点等を検討することである.前者のシステムで,我々は視対象材料として,光の反射の少ない塩化ビニール板を用いて試作した.マスク部は一辺が360mmの正四角形の板にその重心から半径80mmのところを中心に28mmの円の窓をくり抜いて作った.回転対象としては,対角の長さが160mmの正四角形板とした.そして,回転速度が容易に変えることのできる2相励磁方式のステフピングモータを用いて試作した. コントロールはマイコンで行っている. 後者のシステムもほぼDOS/V上でハイパーアニメーションツールを使用して完成しており,並行して各種の実験を試みている.両者の結果には大差はなく同一傾向を示している. 最初に錯視時の眼球運動計測を行った.回転速度を16.5rpmに,被験者の視距離を400mmとした.この結果から,1回転毎に円窓に同期して4つの山状の軌跡が観測され,輻輳運動が見られた.従来,錯視による三次元的な現象は主に脳内で行なわれ,視覚的には無関係なものとされていたが,錯視現象を補助する眼球運動が行われていることがわかった.回転速度を22rpm,33rpmに変化させて行った.その結果,33rpmになると不規則な輻輳運動が目立つようになった.高速で眼球への補助運動力坏十分なため,生じたものと考えられる.被験者全員が錯視現象を知覚し難いと,述べている.また,この実験を片眼で測定した.ほぼ,両眼の場合と同じ結果が得られ,片眼においても輻輳運動が見られた.その中で,一部たいへん興味ある結果が得られた.観察している側の眼球より,隠されている眼球の方が活発な運動を行っている様子が計測された.現時点で、この現象の解明に各種の実験を試みている.その他の実験も,計画通り順調に進行している.
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