研究概要 |
LAN,WAN等のコンピュータ通信の実測トラヒックデータを用いた最近の統計的研究により、情報通信ネットワーク上のトラヒックが自己相似性あるいは長時間依存性をもつことが明らかになってきた。本研究では、フラクタル・ブラウン運動を入力過程とし、ネットワークノードにおける処理時間の確率変動を無視した流体モデル(Norros,1994)に代わる拡散過程近似モデルの構築を目指し、平成10年度は以下の研究活動を行った。 1. ネットワーク内の各ノードを、ある連続時間マルコフ連鎖で変調した到着率と一般サービス(処理)時間をもつ単体の待ち行列システムとして捉え、その系内容数過程を近似する拡散近似モデルを構築した。より具体的には、系内客数過程の確率密度関数の満たす偏微分方程式系を導出した。残念ながら、導出した方程式系の明示的な解を得るには至っていない。この困難さはバースト生の高い確率過程を入力過程とする従来モデルにおけるそれと本質的に等価のものであり、今後は数値解を求めるためのアルゴリズム開発の方向に研究を進めて行く予定である。 2. ほぼ毎月定期的に開催されている(社)日本オペレーションズ・リサーチ学会「待ち行列」研究部会に出席して情報収集を行った結果、東京工業大学・日本電気の共同研究グループおよび九州大学の研究グループが本研究と関連する研究を行っていることを知り、今後、特にフラクタル性の統計的検証上の問題点に関し、情報交換を行いたいと考えている。
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