危険を感ずるものに対する感じ方(リスク認知)は大きな個人差がある。とりわけ情報の送手である専門家と情報の受け手である一般人の間に大きな差がある。本研究の目的の第一はこのリスク認知の定量化法の確立で、そのための調査表の開発を進めてきた。リスク認知の構造を調べるために、文字でなく絵文字を用いた調査表を開発した。第二の目的はこの調査表を使ってリスク認知に対する教育の効果を明らかにすることである。診療放射線技師の養成コースの大学生(RT 学生)は放射線に関して素人として大学に入り、次第に放射線の勉強をして、専門家として大学を卒業する。各学年の放射線教育の内容と時間数はわかっているので、リスク認知に対する教育の影響を研究するよいモデルである。この RT 学生に本研究で開発した調査表を用いて、次のことを明らかにした。(1)絵文字毎に関心と危険についてどう感ずるか調査した結果、大学1年生では、危険を感ずるものに対して関心を持たないという興味ある結果が得られた。これは心理学的には、危険を感ずるものに対して関心を持ちたくないという逃避、反発の結果である。(2)この逃避・反発は教育が進むにつれて徐々に小さくなっていく。(3)4年生では危険を感ずるものに対する心理学的な逃避、反発が無くなる。(4)絵文字を放射線に関係した絵文字とそうでないものに2群した調査では、放射線に対する逃避、反発は2年生で行われる放射線生物学、放射線衛生学、放射線管理学、同実習といった放射線安全学の教育によって影響を受ける。 本研究により以上のリスク認知に対する教育効果の初めての定量的な結果が得られた。
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