研究課題/領域番号 |
10878067
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
和泉 薫 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 助教授 (50114997)
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研究分担者 |
遠藤 八十一 農水省森林総合研究所, 十日町試験地, 主任研究官
小林 俊一 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 教授 (70001659)
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キーワード | 雪崩 / 災害文化 / マタギ / 伝承 / 地名 / 慰霊碑 |
研究概要 |
雪崩危険地を多く抱え、古くからの歴史的遺産の残されている市町村は、東北地方から山陰地方にまで広がっている。その内、特に北陸地方の県立図書館、市町村の役場などに赴き、地名、言い伝え、伝説、災害体験記録、慰霊碑、山林禁伐の掟など雪崩の災害文化に関する資料を収集した。この資料収集と同時に、地名、災害体験記録、雪崩慰霊碑、雪崩防止林など現地の状況把握が現在でも可能な災害文化については、地形・植生などの現地調査や地元住民からの聞き取り調査を実施した。その結果平成10年度に得られた知見を以下に記す。 東北地方から新潟県にかけて狩猟を主な仕事として活躍したマタギと呼ばれる人々は、雪崩避けの呪文・掟、埋没者捜索方法など豊富な雪崩の災害文化を持っていたことがわかった。これは、厳冬期のカモシカ狩りが古くはマタギの狩猟の中心で、新雪表層雪崩の危険と背中合わせの行動であったことによる。 石川県の手取川上流には、ノマと呼ばれる全層雪崩の発生地を示す地名が数多くある。このノマという地名は集落から谷に入って行く出入り口に認められる。これは春期、出作りの焼畑を行っている場所などに出かける際に、全層雪崩に対して注意を促す災害文化であった。 雪崩慰霊碑の調査から、38豪雪の際、福井県下で下校途中の学童と付き添いの教員が雪崩に巻き込まれ死亡する事故が発生したが、近隣の学校では臨時休校にして通学時の被災を回避していたことがわかった。雪崩発生が予想される危険な状況の際にとりうる対応行動が、雪崩に関する伝承・知識の有無に左右されることを示す一例と考えられる。
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