研究概要 |
(1) 現有の最大10kG発生可能な磁場コイルと真空容器(内直径10cm,長さ75cm)を整備し,その一端に直径1.0cmの小半径電子ビーム源を又他端には大直径の終端電極を設置し,その間にラングミュア及びイオンセンシティブプローブを挿入した.装置中央付近に,C_<60>粒子を充填した子孔があいている銅製円筒を設置する.このオーブンを約400℃程度まで加熱し,その小孔を通して円筒の内側に昇華したC_<60>を導入した. (2) 電子ビームを入射した後,ラングミュアプローブ特性の半径方向における変化を詳細に測定した結果,コア領域(r<1 cm)では高エネルギーの電子ビームと低温度の電子が存在し,また広い周辺領域(1≦r≦5 cm)ではプローブ特性曲線が正の印加電圧部分と負の印加電圧部分が原点に関して全く対称な形になることが明らかになり,この領域では等質量の正イオンと負イオンのみが存在することが示唆された. (3) さらに,イオンセンシティブプローブによる半径方向分布の測定を行ったところ,正イオンはコア領域でピークとなる拡散型の分布であり,負イオンはコア領域にはほとんど存在せず周辺領域にピークをもった異常に拡散した分布となっていることが明らかになった. (4) ラングミュァプローブによる半径方向プラズマ空間電位分布の測定によると,コア領域では負電位になっており,広い周辺領域ではほぼゼロ電位で平坦な分布となっていることが判明した. (5) 以上の実験結果は,コア領域では電子ビームによる電離でC_<60>^+が生成された後に,発生した電子が残留中性C_<60>に付着してC_<60>^-が生成され,電荷中性条件の要請によりコア領域にはC_<60>^+が必然的に多く閉じこもり,周辺領域には優先的にC_<60>^-が拡散していくという分布になっていることを示しており,ペア高分子イオンプラズマの生成が実証されたものと考えている.
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