研究概要 |
ジャイロトロンの動作原理は,高速電子ビームの相対論効果による位相バンチングが誘起するサイクロトロンメーザー作用である。空洞共振器内の二つの異なるモードが存在して,互いに競合すれば,位相バンチングを乱し,主モードの動作効果を著しく低下させる要因になるため,これまではモード競合を避けて単一モードのみの動作をおこなうための対策がとられてきた。本研究では,この常識を破って,二つのモードの共存・協力により,電子ビームからいかに多くのエネルギーを引き出し,ジャイロトロンの高効率動作を行わせうるか,また,一つのモードの存在が他のモードの発振開始電流を下げて,ジャイロトロン動作の省電力化にいかに寄与しうるか,に焦点を絞って実験と計算機シミュレーションの双方から検討を行う。 (1) 計算機シミュレーションによって,二つの定常モード(多くの場合,基本波モードと二次高調波モード)が共存する場合の各々の電磁波モードに対するビーム効率と出力,及び電子ビームの速度変化と位相バンチングの空間的発展過程を解析した。その結果,二次高調波モードによる位相バンチングが基本波モードによる位相バンチングをトリガーし,開始電子ビーム電流をいかに降下させるかの定量的解析,及び二つのモードの協力による電子ビーム効率の向上の定量的解析を行った。 (2) 現有のサブミリ波ジャイロトロン(Gyrotron FU IV)を用いて,上記の開始電子ビーム電流降下と電子ビーム効率向上の実験的検証を行った。特に,最適実験条件(磁場強度,電子ビーム電流等)を明らかにし,計算機シミュレーションとの定量的な比較を行った。 (3) グレーティングを用いて各出力モードの分離を行い,各々のパワーの比率を求めた。この比率は計算機シミュレーション結果と比較し、両者のよい一致を得た。
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