本研究の目的は、レーザー光を用いた光脱離過程を応用して、水素負イオンビームをほぼ100%中性化できる光中性化セルの実用化に向けた開発研究を行い、その設計に必要な実験データを得ることである。 光中性化セルはレーザー光を用いた光脱離反応により負イオンを中性化する手法であるが、大面積ビーム全体に十分なパワーレベルを持ったレーザー光が行き渡るかどうか、数秒以上の準定常運転に対応できるかという2点が大きな問題点となり、いまだ実用化に向けた開発研究はほとんど行われていない。本研究では種々の壁面構成(鏡面構成)を検討し、実験的にレーザー光の光強度分布を測定し、中性化に必要なレーザーパワーや光学系の最適な配置など実用可能な光セルを設計するために必要とされるデータを得るための実験を行った。 まず、空間中の光強度分布を測定するために新たに集光プローブを球面鏡と光ファイバーを用いて作成した。この光ファイバーの他端を光電子倍増管につなぐことにより高感度に光信号強度を観測できるものを準備し、プローブ先端への入射光の角度分布特性を測定した。そしてHeNeレーザー光を対向した2枚の鏡面中に入射し、上記した集光プローブを用いて鏡面構成内での光強度の空間分布の測定を行った。 効率の良い光変換のためには鏡面構成自体に集光性を持たせる必要がある。そのため焦点距離の異なる円柱鏡を2枚準備した。今後これを対向させ、その鏡面構成内にレーザー光を入射し、そのときの光強度の空間分布の測定を行っていく。さらにこの光セル中に負イオンビームを通過させ、中性化効率を測定し、測定した光パワー分布との比較を行い、効果的な鏡面構成及び光伝搬方式の検討を行っていく。
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