ヒト細胞に放射線を照射すると多面的な応答がひき起こされるが、その一つとして、DNA合成能が大きく変動する。通常のほとんど全ての細胞ではDNA合成能は一担低下するが、本研究で材料としたGorlin症候群患者由来細胞(以下Gorlin細胞と記載)では全く逆の応答を示した。本研究では現在までに次の結果を得た。 1. Gorlin細胞にX線を照射すると、照射後3時間をピークとしてDNA合成活性が上昇した。 2. DNA合成活性の上がるX線照射3時間後に細胞の核小体の数が増加していた。この事実は、細胞解剖学的観察およびマーカー蛋白質を用いた免疫化学的解析も加えて確立された。 3. Gorlin細胞においてX線照射後に発現量の変動する遺伝子を検索した。X線照射、非照射のGorlin細胞からmRNAをとりだし、differential display法を用いて発現が誘導あるいは抑制される遺伝子を検索した。24種類のプライマーの組み合わせにより、X線照射後に発現量の変化する17個のcDNAバンドが得られた。これらについて、その発現量の変化をRT-PCR法によって確認したところ、そのうちの1バンドから得たクローンが、X線照射後に増加するmRNAに対応するものであることが確かめられた。このcDNAの塩基配列を現在解析中である。
|