本研究は、糸状体ラン藻類と重金属との関わり合いを研究して、重金属耐性を有するラン藻を用いて水中の有害重金属イオンを除去する技術開発を目指して基礎的研究を行うものである。すなわち糸状体ラン藻を用いて、各種重金属イオンを添加して、培養実験を行い、重金属の種類や添加量がラン藻に及ぼす影響を検討する。またラン藻の細胞に吸着あるいは吸収された重金属量を調べる。本年度の研究においては、糸状体ラン藻5種Oscillatoria brevis、Anabaena macrospora、Phormidium tenue、Anabaena spiroi-des、Oscillatoria tenuisを含む培地にカドミウムあるいは銅を添加して検討したところ、上記5種のラン藻で中で、O.brevisがこれらの重金属イオンに対して最も耐性を示すことが明らかになった。そこで O.brevisを含む培地にカドミウムを添加してさらに一週間培養した。細胞を集め、超音波により細胞破砕した後、超遠心分離を行い、さらに上清を熱処理した。遠心分離後、上澄液をゲルろ過クロマトグラフィー(Sephadex G-50)並びにイオン交換クロマトグラフィー(DEAE-SephadexA-25)を用いて精製を行った。カドミウムを含むフラクションを集めてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけたところ、単一バンド(分子量約六千)になるまでに精製されていることが認められた。こうして0.brevisはカドミウムのような重金属イオンに暴露されると、細胞内に取り込まれた重金属と結合するタンパク質を生成して、重金属に対する耐性を有することが示唆された。今後、さらに重金属と結合するこのタンパク質の諸性質について検討・解析し、0.brevisが有する重金属耐性の機構を明らかにし、糸状体ラン藻(マットを作りやすいので捕集しやすい)を用いて、水中の有害重金属を細胞に固定し除去するための知見を得る。
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