研究概要 |
本研究は、糸状体ラン藻類と重金属との関わり合いを研究して、重金属耐性を有するラン藻を用いて水中の有害重金属イオンを除去する技術開発を目指して基礎的研究を行うものである。すなわち糸状体ラン藻を用いて、各種重金属イオンを添加して、培養実験を行い、ラン藻に及ぼす影響を検討する。またラン藻の細胞に吸着あるいは吸収された重金属量を調べる。本年度の研究においては、検討した糸状体ラン藻で中で、重金属イオンに対して最も耐性を示すOscillatoria brevisを中心に用いて実験を行った。O.brevisを含む培地にカドミウムを添加して培養し、細胞を集め、超音波により細胞破砕した後、超遠心分離を行い、さらに上清を熱処理した。遠心分離後、上澄液をゲルろ過クロマトグラフィー並びにイオン交換クロマトグラフィーを用いて精製を行った。カドミウムを含むフラクションを集めてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけたところ、単一バンドになるまでに精製されていることが認められた。酸性条件下で逆相液体クロマトグラフィーを行ってアポタンパク質を得て、エレクトロスプレー質量分析法により分子量を調べたところ約5,500であることが判明した。さらにアミノ酸の配列を分析したところ、システインを多く含むメタロチオネインタンパク質であることが判明した。こうしてO.brevisはカドミウムのような重金属イオンに暴露されると、細胞内に取り込まれた重金属と結合するメタロチオネインを生成して、重金属に対する耐性を示すことが示唆された。また細胞破砕後の残渣中にかなり多量のカドミウムが集積していることが判明した。今後、さらにラン藻における重金属イオンの集積・耐性機構を解析し、糸状体ラン藻を用いて、水中の有害重金属を細胞に固定し除去するための知見を得る。
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