研究概要 |
【目的】 ルピンアルカロイドは、マメ科ソラマメ亜科の植物が生産するキノリチジン骨格を持つアルカロイドで、多くの薬理作用や病害虫の忌避作用などが知られている。これらの生合成に関わる酵素の精製はほとんど進んでおらず、それをコードする遺伝子はまったく単離されていない。本研究では、ルピンアルカロイドの前駆体であるカダベリン分子を環化してキノリチジン骨格を形成する酵素(環化酵素)、およびキノリチジン骨格,の水酸基をアシル化するアシル転移酵素をコードする遺伝子の解明をめざして以下の2つの戦略によるクローニングを進めている。 【方法・結果】 1) cDNA-AFLP戦略 Lupinus属のいくつかの種には、アルカロイド含量の高いbitter form と低いsweet formがあり、後者では環化のステップがブロックされていると考えられている。L.angustifoliusのbitterおよびsweet formのアルカロイドの成分分析を行ったところ、bitter formにはlupanine,13-hydroxylupanineおよびその水酸基がアシル化された化合物などが検出されたが、sweet formでは検出されなかった。そこで、環化酵素遺伝子の単離をめざして、cDNA-AFLP法によりL.angustifolius,bitterあるいはsweet formに特異的に発現しているcDNA断片を単離した。 2) 縮重プライマーによるPCR戦略 植物のある種のアシル転移酵素タンパク質は、DFGWGKPというアミノ酸配列を共通に持つことが示唆されている。L.angustifollius,bitter formを用いて、3′-race法により、DFGWGKPモチーフを持つタンパク質をコードするcDNA断片を単離し、解析を進めている。
|