研究課題/領域番号 |
10878099
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
平野 久 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (00275075)
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研究分担者 |
佐々 英徳 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 助手 (50295507)
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キーワード | N-アセチルトランスフェラーゼ / N-アセチル化 / 二次元電気泳動 / プロテアソーム / 酵母 / トリプシン様活性 / キモトリプシン様活性 / ペプチジルグルタミルペプチド分解活性 |
研究概要 |
真核生物では50-90%の蛋白質がそのN末端をアセチル化されていると推定される。しかし、その生物学的意義については明らかでない。酵母においては少なくとも2種類の基質特異性の異なるNα-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)、すなわちNAT1およびNAT2により蛋白質のN末端がアセチル化される。その一つ、NAT1を欠く変異株(nat1)を用いてN-アセチル化がプロテアソームサブユニットの機能に及ぼす影響を調べることにより、N末端アセチル化の生物学的意義を解明する手がかりを得ようとした。プロテアソームは3種類のプロテアーゼ活性を有する高分子量蛋白質複合体で、19Sの制御ユニットと20Sの触媒ユニットからなる。20Sプロテアソームは14種類のサブユニットから構成されているが、それらのサブユニットのほとんどは、N末端に何らかの修飾を受けている。酵母野生株とnat1変異株から、20Sプロテアソームを精製した後、二次元電気泳動で分離し、サブユニットの移動度を比較した。その結果、nat1変異株において、5つのサブユニット、α2、α3、α4、α7、β3がゲル上で、塩基性側にシフトしていることがわかった。これは NAT1を欠く酵母変異株では、N末端のアミノ基が電荷を持つようになるため、等電点が変化し、二次元電気泳動図で移動度に変化が見られたものと考えられる。これらのサブユニットをPVDF膜に転写した後、シークエンサーによりN末端アミノ酸配列を分析したところ、野生株においてはN末端が保護され分析できないのに対し、変異株では、エドマン分解によってアミノ酸配列を決定することができた。従って、これらのサブユニットは野生株においてNAT1によりアセチル化されていると考えられた。一方、20SプロテアソームのN末端アセチル化と機能との関係を調べるため、野生株とnat1変異株の間で、20Sプロテアソームのトリブシン様活性、キモトリプシン様活性、ならびにペプチジルグルタミルベプチド分解活性に違いがあるかどうか調べた。その結果、キモトリプシン様活性において、SDSを添加しない場合、nat1変異株で野生株よりも高い活性が得られた。このことから、20Sプロテアソームにおいては、サブユニットのN-アセチル化がキモトリプシン様活性と関係している可能性があると考えられた。
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