研究概要 |
リボソームはmRNAの塩基配列に従ってポリペプチド鎖を正確に伸長し,タンパク質を合成する細胞内小器官である.しばしば,蛋白質合成工場に例えられる通り,遺伝暗号解読,ペプチジルトランスファー,トランスロケーション,分子的な校正など,生命にとって極めて重要でかつ複雑な仕事を整然と行なっており,その構造が決定された場合の生物科学全体に与えるインパクトは計り知れないものがある.本研究では,リボソームの原子レベルでの立体構造解析を行なうための,高分解能のX線回折を与える結晶を調製することを目的とする.私達は,これまで,京都大学の左子らが単離した好気性の超好熱古細菌Aeropyrum pernix(至適生育温度が90度)を使ってリボソームを精製することを試みてきた.しかし,現在までに結晶が得られていないので,今年度はさらに,高度好熱真性細菌であるRhodothermus obamensisからリボソームを調製することを試みた.この菌体は他の好熱菌と比べて増殖速度が速いので,容易に大量の菌体を得ることができるというメリットがある.超遠心分離法,疎水性クロマトグラフィー,ショ糖連続密度勾配遠心法を用いて,70Sリボソーム,各サブユニットの精製方法を確立した.超遠心分離で粗精製した70Sリボソームは,さらに疎水クロマトグラフィーを用いることで,より純度高く精製することができることを確認した.Aeropyrum pernix由来のリボソームと合わせて,現在さまざまな条件下で結晶化を試みている.
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