研究概要 |
生体試料を冷却・凍結できる顕微鏡の作製と評価を昨年度に終え、今年度は加熱法の検討を行った。生体試料を局所的に高時間分解能で加熱するためには、赤外線レーザーを用いることが有効である。特に、水分子の吸収波長である1,500nm付近の赤外線レーザーを対物レンズで集光させることにより、生物試料を非侵襲的に加熱することが可能である。そこで、オリンパス光学工業の倒立顕微鏡IX70を改造し、出力2Wの赤外ラマンレーザ(波長1,460nm)を照射するための赤外レーザー顕微鏡システムを組み立てた。実際に、50〜55℃でゾル-ゲル相転移するメチルセルロース水溶液に対物レンズを用いて赤外線を集光させたところ半径〜10μmの局所領域でゲル化が起こった。以上の結果から、局所領域を周囲より40℃以上も加熱できることを確認した。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現している細胞に赤外線レーザーを照射すると温度の上昇にともなってGFPの蛍光強度が減少した。この現象を利用して局所領域の温度を測定できることもわかった。試料の3次元的な温度分布を測定するために既存の共焦点蛍光顕微鏡に赤外線レーザー顕微鏡システムを組み込んだ。これにより、生物試料を冷却、加熱(凍結、解凍)できるシステムが構築できた。
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