研究概要 |
本研究の目的は、我々がこれまで行ってきた抗体を用いた標的遺伝子単離法を、より効率の良い単離法にするため、転写因子にタグを付けた遺伝子を導入したトランスジェニック線虫を作製し、そのタグを利用した標的配列の濃縮を行うことである。 2種類のホメオボックス遺伝子Hox(mab5,egl5),unc4にFLAGエピトープタグおよびHis6タグを結合したコンストラクトを作製し、これらの遺伝子が染色体に組み込まれたトランスジエニック個体を得た。導入遺伝子がミュータントフェノタイプをレスキューすることから、これらの遺伝子産物は正常遺伝子産物と同じ標的遺伝子群の発現制御をしていると考えられる。His6タグは他の抗体による精製と異なり、Niカラムを用いて、蛋白が変性状態で精製することが可能であることから、この方法においても有用なタグであると考えられる。また、His6タグは大腸菌、酵母、培養細胞などからの蛋白の精製に広く用いられているが、多細胞生物個体中でタグ付き蛋白が正常な機能を果たすことを示したのは、本研究が初めてであると思われる。 抗体やタグを利用してアフィニテイー精製したDNAプール中に濃縮された標的配列をDNAチップを使ったハイブリダイゼーションによって特定できるかどうかの検討を行った。モデル実験として全ゲノムに特定の配列を加えたDNAをプローブとしたハイブリダイゼーションによって、10倍以下の濃縮で特定配列の特定ができることが明らかになった。またチップ作製のための短い(約100bp)ゲノム断片を含んだライブラリーを作製した。DNAシークエンサーを用いたゲノムスキャンニングによる濃縮配列検出の検討も現在行っている。
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