インテグリンはその細胞質領域において多種類の蛋白質因子が集積し、この複合体を介してインテグリンのシグナル伝達は行われる。また、これらの複合体を介して細胞内の状況がインテグリンに伝わり、その結合性等が制御される。インテグリンと細胞外基質との接着は細胞の動的な運動過程において形成されるものであり、従って、このような動的過程においてどのようにしてインテグリンはそのシグナル伝達因子である集積蛋白質群と会合するのかは、細胞の運動性制御を明らかにする上で重要なポイントである。我々は、インテグリン裏打ち蛋白質パキシリンが細胞質においては、一部ゴルジ装置とオーバーラップする核周辺域の膜構造体に局在していることを明らかにした。パキシリンは可溶性蛋白質であることから、引き続き、パキシリンに結合する蛋白質の精製、単離同定を行ったところ、3種の新規蛋白質を見い出した。興味深いことにこれらは全てArfGAPに相当する配列を有しており、実際、in vitroではそのような活性を示すと考えられた。現在、細胞運動におけるパキシリンの細胞内輸送の分子機序を解明すべくその機能解析を進めている。
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