研究概要 |
神経細胞は発生過程で大量の細胞死を起こすことが知られ、これがシナプス形成の確立に重要な役割を果たしている。小脳顆粒細胞系ではin vitroで大量の神経細胞死が起こり、且つBDNFで抑制されることから中枢神経プログラム細胞死モデルとみなされる(Suzuki&Koike,1997;Tanaka et al.,1998など)。生後一週間のラット小脳全体より単離した小脳顆粒細胞を通常のK+濃度(5.4mM)下で培養すると、細胞は突起伸長・分化の後(2-4DIV)、変性を始め、5-6DIVには約半数の細胞が死滅する。この細胞死はタンパク合成及びRNA合成阻害剤などにより抑制される。既知の遺伝子の発現に関してノーザンブロット法により調べた。対照としてはG3PDH(1.3kbp)の発現を調べた。c-fosは全く検出されなかった。c-jun(3.2kbp)は3DIVでもわずかに検出され、5DIVで弱く誘導された。これに対して、cyclinD1(3.7kbp)は3DIVでは検出されず、4一5DIVで顕著に誘導された。抗cyclin D1抗体による免疫組織化学では顆粒細胞とミクログリアに染色性を認めた。アフィデイコリン処理で顆粒細胞に特異的な発現を認めた。cyclinD1(3.7kbp)の顕著な誘導は本培養条件下での小脳顆粒細胞死に対して重要な役割を持つものと考えられ、この結果はin vivoにおけると免疫組織化学的実験と符合すると考えられる(Sakai et al.,投稿中)。更に、外顆粒層のみを単離培養して、栄養因子などの効果を調べた。その結果、小脳全体を分散培養した場合と異なって、BDNFは細胞死を誘導した。現在この効果の分子機構を詳細に検討している。
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