海馬のparvalbumin(PV)含有GABAニューロンは、錐体細胞の主として細胞体およびaxon initial segmentに抑制性シナプスを作り、活動電位の発生を直接調節する役割をもつと考えられている。今回私は、PVニューロンの遠位樹状突起が上昇層と白質の境界部に沿って予想外に側方に広がり、かつお互いに非常に密に接触し、海馬全体に広がる樹状突起ネットワークとも言うべき構造を作っていること、そしてこの樹状突起間の接触部位に、電子顕微鏡的に明確なgap junctionが確認できることを明らかにした。さらに解析を進めるために定量的電顕連続切片観察を行い、同境界部にある樹状突起間接触部位の24%にgap junctionを認めた。また、樹状突起間化学シナプスや混合型シナプスも存在した。側方に広がる樹状突起ネットワークにおけるgap junctionの存在は、細胞体が離れて存在するPVニューロンが、位相のそろった入力を受けることを意味する。以前に私は、PVニューロンがお互いの細胞体の上にも密にGABAシナプスを形成することで相互抑制回路を形成することを明らかにしたが、今回の結果からPVニューロンにおける化学シナプスと電気シナプスを介する二重のネットワークの存在が明らかになった。このような構造は、in vivoで観察される広範囲での同期的振動(gamma oscillation)の発生機序を探るうえでの、形態学的基礎を提供する。
|