当研究では、着床後間もないマウス胚に生じる異常発生の遺伝学的基礎を明らかにするための検討を行った。受精後5.5〜6.5日に組織学的に認められる発生異常の種類は、マウスの系統によって違いがあるものの頻度は想像以上に高い。昨年度は胚体外胚葉細胞が接着性を失い原羊膜腔に充満する異常について検討し、胚を分離する際に用いる塩類溶液に含まれるカルシウムおよびマグネシウムイオン濃度の影響を示す結果を得た。しかし、全ての例をアーテファクトで説明することは困難であり、遺伝的な要因の関与やエピジェネティックな効果の可能性も否定できない。本年度はこの点について、解析を進めたが未だ結論を得るに至っていない。これと並行して、二番目に多い異常の検討を行った。この型の異常胚は5.5日目で、正常胚よりもやや小型であり、原羊膜腔の形成が阻害され、胚体外胚葉細胞塊の中心に数個の変性細胞が認められる。胚体部の近位内胚葉は厚さと構造が不規則で、正常胚に見られるほぼ厚さが一定の連続したシート状になっていない可能性がある。内胚葉層と外胚葉層の間には隙間が認められない特徴があり、129/SV系統では頻度は約8%である。現在並行して研究を進めているt^<w5>ホモ接合胚に非常によく似ているので、これをモデルに異常発生原因の究明を試みている。
|