ミクロ肝臓を作成することを目標に、今年度は以下の実験を行った。 1. ラットによる肝細胞スフェロイド作成法の検討 1) 細胞分散法の検討 スフェロイド作成に適した細胞分散法を検討した。一般的なSeglen法と異なり、EGTAおよびCaを添加しない潅流液で細胞を分散し、回旋培養を行うと6〜9時間でスフェロイドが形成されることが判明した 2) 肝細胞スフェロイド形成におよぼす添加物質の効果。 Eudragit、type1コラーゲン、フィブロネクチンについて検討を行った。Eudragitはスフェロイド形成に48時間要したが、過凝集を抑制し良好な形態のスフェロイドを形成した。Type1コラーゲンはスフェロイド形成を促進し、小型スフェロイドを6時間程度で形成したが、ヒト血清中では速やかに崩壊した。フィブロネクチン添加ではスフェロイド形成は抑制された。今後合成マトリックスの使用、肝細胞自体にマトリックス合成を促進させる物質の添加について検討が必要である。 3) 非実質細胞との混合培養 培養初期から非実質細胞と培養を行ない、混合スフェロイドが形成されることが確認されたが、効率よく非実質細胞を接着させるために、添加時期・同時に添加する物質をさらに検討する必要がある。 2. 肝細胞スフェロイドの評価 1) 形態学的観察。 位相差顕微鏡で、スフェロイドの形成過程を観察。結合した数個の肝細胞が癒合して凹凸のある細胞塊が形成され、その後表面が平滑化することが判明。共焦点レーザー顕微鏡にて螢光標識した非実質細胞はほとんどがスフェロイド表面に存在することが明らかになった。透過型電子顕微鏡ではスフェロイド内部の肝細胞は立方型で豊富なミトコンドリアを有し、細胞間にはtight junctionや毛細胆管の存在を認め、活発な代謝機能を有することが示唆された。 2) 肝細胞スフェロイドの機能評価。 単層培養と比較して1日目で約2倍の尿素合成能を発揮したが2日以降は漸減していった。培養14日では単層培養はほとんど尿素合成能はなかったが、スフェロイドは1日目の1/10であった。
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