研究課題
水の4電子酸化反応は、植物等の光合成における当該反応の研究から水素エネルギー社会におけるグリーン水素の効率的生産に至るまで、環境に負荷を与えず、かつ理論的に高効率で物理エネルギー(光、電力など)を化学エネルギー(燃焼等によりへと変換する反応として重要であり、世界中で急速に研究展開されている領域である。現在、世界中で競って研究がされている「人工光合成」反応の成否は如何に水を低エネルギーで完全分解できるかにかかっている。この目的を実現するため本年度は次の目標で研究を進め、以下の成果を得た。1.開発した水分解触媒の人工光合成系への適用本研究で開発したマンガンポルフィリン二量体は極めて低過電圧で水分解を触媒的に行える。この電気化学的特性は、色素増感型太陽電池における増感色素の酸化体の還元電位と水の酸化電位の中間に位置する。そこで色素増感太陽電池の原理を適用し、ルテニウム錯体とマンガンポルフィリン二量体を二酸化チタンナノ粒子表面に共修飾した電極を用いて水溶液中において可視光照射による水分解反応を行った。その結果、バイアス電位を電極間に適用すること無く、光照射により色素吸収長波長末端670nmまで光応答電流が観測され、475nmにおける量子収率は約3%に達した。また、光照射による酸素/水素発生が観測され、その定量により90%以上の電流効率で水分解が可能となった。2.コバルト錯体による水分解反応各種金属錯体を検討することにより、新たに含窒素配位子を持つコバルト錯体が水分解に適した性能を有することを見いだした。水溶性錯体として均一水溶液中での電解を行うと中性溶液付近で過電圧が最小となった。また、この電極を用いて連続水分解反応を行うと24時間後においても電解電流の低下は見られず高い耐久性を有していることが明らかとなった。
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