研究概要 |
本研究は、心臓CTイメージングの有効な撮影プロトコルと画像生成のデータ処理法(画像再構成法)を開発することを目的とする。これを実現するために克服すべき3つの小テーマの中で、本年度は心臓CTイメージングを目的とした『疎な投影データからの画像再構成』について研究を行った。まず、心電同期や呼吸同期を用いて投影データ収集を行った場合の動画像の生成が、疎な投影データからの画像再構成に定式化できることを示した。次に、代表者らの先行研究である被写体に関する事前情報を用いてベイズ推定により疎な投影データから高品質の画像再構成を行う手法(Rashed, Kudo : 『Intensity-based Bayesian framework for image reconstruction from sparse projection data』Medical Imaging Technology, Vol.27, pp.243-251, 2009)を、心臓CTイメージングの動画像に拡張した。具体的には、心臓の動画像は空間方向のみではなく時間方向にも強い相関を持つことに着目して測定データの情報不足を補う時空間リファレンス画像を構築して、これをコンプレストセンシングによる画像再構成の正則化に利用して疎な投影データから高画質な画像を生成する。そして、開発した画像再構成法のソフトウェア開発とシミュレーション実験を行った。心臓の動きを模擬した数値ファントムを準備して計算で擬似的に投影データを作成して、提案手法と本問題に対する代表的な先行研究であるトータルバリエーション(TV)を用いた再構成法で画像再構成を行い、統計雑音や動きアーティファクトなどの画質と被曝量の観点から性能評価を行った。その結果、提案手法によりTVと比較してはるかに少ない計算量で、ほぼ同等の画質の動画像が得られることが示された。
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