本研究は、強磁性体・強誘電体・半導体ヘテロ界面における磁気現象の操作とそれに関連する界面物理現象の解明を目的としている。具体的には、強磁性体と強誘電体とのヘテロ界面における歪み誘起磁気・電気結合効果の物理機構を解明し、それに基づいて強磁性体の磁区構造を人工的に制御・操作することを目指している。さらに、上記により実現される磁区構造制御技術を強磁性体/半導体ヘテロ構造におけるスピン注入技術、スピンフィルター効果に基づくスピン検出技術へと展開することで、スピン注入、スピン検出過程での磁性電極の磁区構造制御を電流を用いない手法で実現することまでを狙っている。本年度は、(1)強磁性体/強誘電体ヘテロ構造の作製、(2)磁気光学測定装置の構築、および(3)構造相転移および電圧印加に伴う磁気特性変化の評価について研究を実施した。具体的には、強誘電体としてはこれまでに構造相転移挙動や圧電特性等が十分に調査されているBaTiO_3と強磁性Feとのヘテロ構造をMBE法により作製し、BaTiO_3の正方晶から斜方晶(280K)、斜方晶から菱面体晶(183K)への構造相転移に伴うFeの磁気異方性の変化を、構築した磁気光学効果測定装置を用いて評価し、磁気異方性が明瞭変化することを捉えることに成功した。また、BaTiO_3が正方晶、斜方晶、菱面体晶のそれぞれの結晶相を有する温度領域において、電圧印加に伴うFeの磁気異方性の変化を観察したところ、電圧印加に伴う明瞭な保持力の変化を観察することに成功した。
|