研究課題/領域番号 |
10F00077
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
谷山 智康 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授
|
研究分担者 |
GORIGE Venkataiah 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 外国人特別研究員
|
キーワード | スピンエレクトロニクス / 磁性 / 先端機能デバイス |
研究概要 |
本年度は、昨年度実施した強磁性Fe薄膜/強誘電体BaTiO_3ヘテロ構造における歪み誘起磁気異方性変化についてさらに精査することに加え、スピン注入源として有望なハーフメタルFe_3O_4と強誘電体BaTiO_3とのヘテロ構造についても同様に調査した。具体的な研究成果を以下に記す。 (1)強磁性薄膜/強誘電体ヘテロ構造における電圧印加および構造相転移を利用した磁気異方性の制御強誘電体BaTiO_3単結晶基板上に強磁性金属Feおよび磁性酸化物Fe_3O_4を(反応性)MBE法によりエピタキシャル成長した。作製した強磁性Fe/BaTiO_3ヘテロ構造に対して、温度変化に伴うBaTiO_3の構造相転移を利用することで、Feの磁化配向を90度変化させるための手法が見出された。また、強磁性薄膜に取付けられた上部電極とBaTiO_3下部に取付けられた下部電極との間に電圧を印加することで、強磁性薄膜直下のBaTiO_3に圧電効果に由来する格子歪みを誘起し、接合界面における格子歪みが磁性薄膜の磁気異方性に与える影響を調査した。その結果、FeおよびFe_3O_4を強磁性体とした試料に対して接合界面における分極電荷に起因すると思われる印加電圧に対する保磁力の履歴効果が観測された。この結果は、電気磁気結合効果の制御により、強磁性薄膜/強誘電体ヘテロ構造の磁気異方性を制御可能であることを示唆している。 (3)顕微磁気光学計測による強磁性薄膜/強誘電体ヘテロ構造におけるドメイン構造の観測 BaTiO_3の強誘電ドメイン構造は非常に複雑であるため、より局所的に上記構造における強磁性薄膜の磁気異方性を評価する必要がある。本研究では、Fe/BaTiO_3ヘテロ構造に対して、顕微磁気光学計測を行い、強誘電ドメイン構造と強磁性ドメイン構造との間に明瞭な相関があることを示す知見が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度交付申請書に記載の実施計画をおおむね完了しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の研究実績に示した通り、磁気異方性を操作するには、強誘電ドメイン構造に関する知見が重要である。そのため、これまでに実施してきた顕微磁気光学計測をさらに展開・推進する。具体的には、強磁性薄膜の膜厚を最適化することで、強誘電体と強磁性体のドメイン構造とを独立にマッピングできる構造を作製し、それぞれのドメイン構造に関する知見に基づいて磁気異方性を制御するための指針を確立する。
|