研究概要 |
新規ホイスラー化合物の合成,結晶構造解析および熱電変換特性測定を行った.得られた主要結果は以下のとおりである: 1.組成式X_9Zn_7Z_8(X=Co, Rh and Ir ; Z=Sn and Sb)で表される新規ホイスラー化合物の合成に成功した.X線回折およびHAADF-STEM法により結晶構造解析を行った結果,通常のハーフホイスラー化合物XYZ(Normal Half-Heusler : NHH)のユニットセルの2×2×2倍の超格子構造(Double Half-Heusler : DHH)を有することがわかった.NHH構造のユニットセル中では,4つの空孔が正四面体の頂点上に配置しているが,DHH構造は,空孔が形作る正四面体の向きが異なる2種類のNHHサブユニットが交互に積み重なったものと考えることができる. 2.Co_9Zn_7Sb_8およびCoMnSbを結ぶすべての組成領域において,DHH構造を有する4元系固溶体が形成されることがわかった.Mn組成が増加するに従って,サブユニットあたりの価電子数濃度が16から21に増加するとともに,電気伝導特性は金属・半導体・金属遷移を示した. 3.Fe_<1-x>Ni_xTiSbホイスラー化合物の熱電特性を,Ni添加量および温度の関数として測定した.Fe_<0.6>Ni_<0.4>TiSbおよびFe_<0.4>Ni_<0.6>TiSbは,それぞれpおよびn型の伝導特性を示し,700Kにおいて4.3および9.5μWcm^<-1>K^<-1>のパワーファクターを示す.さらに,Tiの一部をZrで置換した結果スピノーダル分解が生じ,熱伝導率が飛躍的に低減された.
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