研究概要 |
本研究では、人獣共通感染症の原因原虫でもあるトキソプラズマ原虫の宿主体内における発育ステージ(急性感染期のタキゾイト→慢性感染期のブラディゾイト)変換機構の解明と新規組換えワクチン開発を試みる。本年度に実施した研究内容と得られた研究成果は以下の通りである。 1.試験管内ステージ変換系を確立した。試験管内で培地のpHを7.4から8.0に上げることにより人為的にタキゾイトからブラディゾイトへのステージ変換を促し、大量のブラディゾイト虫体を得ることができた。 2.ブラディゾイト虫体の完全長cDNAラブラリーとESTデータベースを作成した。ブラディゾイト虫体のmRNAを抽出し、オリゴキャッピング法にて完全長cDNAライブラリーを構築した後、約10,000クローンの全塩基配列を解読し、ESTデータベースを作成した。 3.トランスクリプトーム解析を行った。以前当研究グループで構築したタキゾイトESTデータベースと2)で作成したブラディゾイトESTデータベースの比較により、タキゾイト或いはブラディゾイト単一ステージのみに特異的に発現する遺伝子を網羅的に探索した。今回は特に虫体特異的代謝経路に注目し、ブラディゾイトステージで特異的に転写されるグリオキサラーゼ(メチルグリオキサール(MG)とグルタチオン(GSH)からS-D-ラクトイルグルタチオンを生成させる酵素)遺伝子のクローニングを行った。
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