研究課題/領域番号 |
10F00115
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
田中 英明 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授
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研究分担者 |
NASER Iftekhar Bin 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 外国人特別研究員
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キーワード | Draxin / 網膜-視蓋投射 / 軸索ガイダンス / 遺伝子欠損マウス / DiIトレーシング / Sperry R.W. / chemoaffinity仮説 |
研究概要 |
鳥類や両生類などでは、視蓋は視覚中枢であり、二次元的な空間分布をする網膜神経節細胞の神経軸索は、相対的な同じ位置関係を維持して規則正しく視蓋に投射する。この形成過程を説明するために1963年にSperry R.W.がchemoaffinity仮説を出し、それぞれに分子的な標識が存在することを提唱した。この網膜-視蓋投射は神経回路網形成のモデル系として最も詳細に研究され、半世紀を経て、その分子的実態が少しずつ明らかになった。これまでに前後軸に沿っては、軸索ガイダンス分子ephrin-Aとその受容体EphAが濃度勾配を持って発現機能し、背腹軸に沿ってはephrin-BとEphB、さらにWntとRYKが機能して、規則正しい投射パターンが形成されると考えられるようになった。 マウスの視蓋に相当する上丘に、我々が見出した軸索ガイダンス分子Draxinが背腹軸に沿って濃度勾配を持って発現していた。Draxin遺伝子欠損マウスの新生児網膜にトレーサーであるDiIの小さな結晶を置いて軸索投射を解析した。その結果、Draxin遺伝子欠損マウスでは、網膜から上丘への軸索投射には、正常な投射以外に背側にシフトした異常投射が生じていることを見出した。既知のガイダンス分子に加え、Draxinが網膜投射に働いていることを明らかにした。次の課題は、網膜神経節細胞に発現されているDraxin受容体の同定である。
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