研究概要 |
(1) PGE2はTCRで活性化したT細胞でIL-12Rβ2発現を増強する。私達はTCRで活性化したT細胞において、T-betやIFN-γの発現上昇は認められないが、IL-12非依存性の経路を介してIL-12Rβ2の発現が上昇することを見出した。EP2とEP4を介するPGE2誘導性のIL-12Rβ2はIL-12刺激に応答し機能する。さらに阻害剤やアゴニストを用いた検討により、PGE2誘導性のIL-12Rβ2の発現上昇はPI3K-AktとcAMP-PKA両方の経路に関与することを見出した。 (2) IFN-γシグナル依存的、非依存的なcAMPによるIL-12Rβ2の誘導。私達はマイクロアレイを用いた解析から(a)野生型ならびにIFN-γR1欠損マウス由来T細胞でcAMPがIL-12Rβ2のmRNA発現を上昇させる(b)cAMPがIFN-γシグナルの下流分子のポピュレーションを強く変化させることを見出した。一方、IFN-γR1欠損マウス由来のT細胞ではこのようなポピュレーションの変化は確認されなかった。さらに、cAMP単独ではどのようなタイプのT細胞でもIL-12Rβ2の発現が誘導されるが、cAMPとIFN-γもしくはTCRの刺激によって強くIL-12Rβ2の発現が誘導された。 (3) IFN-γシグナル依存性のcAMPによるIL-12Rβ2の誘導はIFN-γR1を介している。cAMPのT細胞刺激はIFN-γR1発現だけでなくINF-γによって誘導されるSTAT1活性化とIL-12Rβ2の発現を増強する。 (4) CREBとCRTC2はcAMP-PKA経路を介して誘導されるIl12rb2とIfngr1の発現を媒介する。私たちは、PKA特異的アゴニストや阻害薬を用いて、またCREB siRNAやCREB変異体の過剰発現により、T細胞においてcAMPがPKA-CREB経路を介してIl12rb2とIfngr1の発現を誘導することを確認した。また、cAMPがCREBのコアクチベーターであるCRTC2の脱リン酸化や核移行を促進し、転写活性を上昇させることを見いだした。さらに、CRTC2 siRNA,CRTCの過剰発現を用いて、CRTC2がIL-12Rβ2やIFN-γR1発現を誘導することを確認した。クロマチン免疫沈降法では、CREBとCRTC2がcAMPによる活性化によりIl12rb2やIfngr1遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー領域にリクルートされることを見いだした。 (5) T細胞におけるEP4のコンディショナルノックアウトにより生体内でのTh1サイトカイン受容体の発現とTh1応答が低下する。私たちは接触過敏症モデルとT細胞移入による大腸炎モデルを用いて、T細胞でのEP4欠損によりTh1分化が減弱し、Il12rb2,Ifngr1,Il2rbなどのTh1関連サイトカイン受容体およびCREB/CRTC2の標的遺伝子の発現が低下することを見いだした。さらに、Th1細胞により惹起される皮膚と大腸の炎症が減弱することを見いだした。
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