研究概要 |
CD8+T細胞は標的細胞に提示されるペプチド/MHCクラスI複合体を特異的に認識し、これを傷害する。提示される抗原ペプチドは内在性に発現した蛋白に由来する分解産物であるが、これらのペプチドがどのようなメカニズムでつくられ、またどのようなペプチド群(レパートリー)を形成しているのかは未だに不明な点が多い。本プロジェクトではマススペクトロメトリーを利用し実際に提示されてくるMHCクラスIペプチド群の網羅的解析を行う。 当該年度では、 1)HLA-A24特異抗体産生ハイブリドーマよりモノクローナル抗体を精製濃縮し、ペプチド/HLAクラスI複合体を回収するための親和カラムを作成した。 2)約1.5×10^9個のHLA-A24発現するヒト大腸癌細胞株(SW480,Colo320,HCT-15/b2m)より細胞抽出液を準備し、親和カラムでペプチド/HLAクラスI複合体を回収した後、弱酸で結合ペプチドを遊離回収した。 3)分子量3kDaフィルターを通した遊離ペプチドをRP-HPLCによりフラクション化し、それぞれのサンプルをマススペクトロメトリー(ABI/4800plusMALDI_TOF/TOF)により網羅的にシークエンス解析した。 4)SW480,Colo320,HCT-15/b2mからは重複のない186個、コントロールとして用いたHLA-A24発現しないヒト大腸癌細胞株HCT-116からは5個のペプチド配列を検出した(2013年3月現在)。実験の再現性は約80%程度であり、また既知のHLA-A24結合モチーフを利用した親和性解析では前者のペプチド群が有意に高く、後者はいずれもHLA-A24結合モチーフを欠損していた。この結果は、本システムにより高い精度でがん細胞のHLA-A24に提示されるナチュラルペプチドレパートリーを網羅的解析可能であることを示している。
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