研究概要 |
本研究ではHBZ遺伝子のHTLV-1関連疾患発症機構を解析することを目的とした。TGF-β反応性レポーターを使ってATL細胞株におけるTGF-β経路の活性化を解析したところ、多くのATL細胞株ではTGF-β経路の活性化が認められた。TGF-β/Smadレポーターを使ってHBZの作用を解析したところ、HBZはTGF-β/Smad転写経路を強力に活性化した。HBZと活性化Smad,抑制性Smadとの結合を解析したところ、活性化Smad2,3と結合することが示された。次にp300阻害活性を有するE1AはHBZのTGF-β/Smad転写経路活性化を抑制したことからHBZによるTGF-β/Smad転写経路活性化にp300が関与することが明らかとなった。 HBZはactivation, central, bZIPという3つのドメイン構造を有しているがactivationドメインが活性化に必須であり、bZIPドメインはむしろ抑制に作用することが示された。HBZによるTGF-β/Smad転写経路活性化に意義を探るためにTGF-β/Smad転写経路により活性化される遺伝子群へのHBZの効果を解析した。マウスナイーブTリンパ球にHBZをレトロウイルスベクターにより発現させた。HBZを発現したTリンパ球においてSOX4, CTGF, FOXP3, RUNX1,などのTGF-β/Smad転写経路により発現が活性化する遺伝子の発現が上昇していた。Foxp3は制御性Tリンパ球のマスター遺伝子であり、HBZトランスジェニックマウスでは制御性Tリンパ球が増加することが報告されている。マウス及びヒトナイーブTリンパ球にHBZを発させるとFoxp3の発現が増加し、TGF-β存在下では、その発現が著しく亢進した。HBZによるTGF-β/Smad転写経路の活性化が、その機序であることが示された。
|