研究概要 |
我々の研究グループは、頭頸部扁平上皮癌における新規癌抑制遺伝子候補を同定するため、ヘテロ接合性消失解析(LOH解析)を行ってきた。これまでの研究成果では、染色体1p36において高頻度にLOHが生じている3つの領域を発見し、頭頸部扁平上皮癌発生に関与する新規癌抑制遺伝子候補としてp73、DFFB、UBE4B、RIZ、Rap1GAP, EphB2, Runx3を同定した。本研究では、頭頸部扁平上皮癌に関わる新規癌抑制遺伝子の同定および機能解析を行う。 平成22年度は、新規癌抑制遺伝子としての候補遺伝子であるRIZに焦点をあて、遺伝子解析を行った。これまで他臓器で報告されていたP704 polymorphismとAsp283Glu polymorphismの2種類の遺伝子多型について頭頸部扁平上皮癌53症例を用いて検討し、遺伝子多型と臨床データとの比較、生存分析を行った。しかしながら、これらの間に統計学的な有意差は認められなかった。また、頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いたRT-PCRによるRIZ遺伝子のmRNA発現解析においても、胃癌や大腸癌と比較して、mRNA発現の減弱は認められなかった。 以上の結果から、RIZ遺伝子は頭頸部扁平上皮癌においては癌抑制遺伝子として機能していない可能性が考えられた。 今後は、1p36領域に存在する頭頸部扁平上皮癌の癌抑制遺伝子候補であるEPHB2やRap1GAP遺伝子に焦点をあて分子病理学的、組織化学的に詳細な解析を行う予定である。
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