研究概要 |
昨年度の研究計画を継続し,高精細衛星画像データ(LANDSATやALOS)を用いて大都市圏および周辺地域における住宅の水平的拡大,都心部における建物の垂直的拡大を時系列的に可視化する方法を検討した.さらに,今年度は大都市圏の拡大に伴う都市化地域の人口増とその空間的メカニズムを探った.2011年12月にはヤンゴンとバンコックに出向き,共同で土地利用変化に関するフィールドワークを実施し,大都市圏内で住宅立地や商業機能,工業団地などが集積していく過程をさぐった.また,市域の空間的範囲(境界)を確定する汎用的な方法も検討した.土地利用項目の変化にもとづき都市化の進展度が推定でき,GISとRSを併用して将来の人口分布が予測できる可能性を確認した. 最近のリモートセンシング技術の進歩はめざましく,解像度の高い衛星画像データが安価に提供されるようになったが,これらのデータは,時には都市化や都市構造の研究に不向きの場合があることがわかった.高解像度故に建物周辺の施設や影がバイアスになり,建物分布を適格に表現できないことが多々みられた.適切な補正が求められることが明らかになった. 土地利用の表現方法にはラスタ形式とベクタ形式が知られているが,発展途上国の都市化研究ではベクタ・データの入手は難しく,ラスタ形式のリモセンデータに頼らざるを得ない状況が浮かび上がった.都市化の速度や人口集積プロセスに関してはGISとRSを組み合わせたアプローチが欠かせない.共同研究の成果は地理情報システム学会および地球惑星科学連合大会で発表するとともに,IGISやCUESなどの国際学術雑誌に投稿し,受理された.
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今後の研究の推進方策 |
申請段階では,ビルや家屋など建物一つ一つの人口数を算出・予測し,都市人口密度の推定を目標に据えた.しかし,欧米諸国と異なり発展途上国では,建物が複雑に入り組み密集しており,的確に居住密度を導き出すのは容易ではないことが明らかになった.GIS・RSや衛星画像の利用は,ミクロ地域よりも,大都市圏全体,すなわちマクロ・メソスケールにおける人口の空間分布を推定するのにより威力を発揮すると考えられる.
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