研究課題/領域番号 |
10F00312
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 准教授
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研究分担者 |
DAHL C.D. 京都大学, 霊長類研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | チンパンジー / 顔認識 / コミュニケーション / 信号生成 / 比較認知科学 |
研究概要 |
チンパンジーを対象にその顔認識の諸相とコミュニケーション信号の処理の解明に向けて検討を進めている。顔認識については、見本合わせを用いた個体識別課題において、自種の顔の識別の優位性が年齢を経るにつれて消失することが明らかになった。11歳くらいの若いチンパンジーでは、チンパンジー間の個体識別の成績がヒト間の個体識別の成績よりも高かったのに対し、その親世代のチンパンジーでは、逆にヒト間の個体識別の方が成績が良いという結果となった。詳細な分析の結果、この違いは刺激が持っている単純な知覚属性のみでは説明ができないこともわかった。飼育環境という制約された社会環境においてはチンパンジーたちは多様な自種の顔よりも数多くの異なる人の顔に接する機会が多くなる。このような長期にわたる経験の効果が、これまで繰り返し報告されてきた自種優位効果を覆しうることを初めて示した。本成果については現在投稿中である。 また、コミュニケーション信号の問題については、チンパンジーのパントフートやドラミングの際のリズミカルなパターンの規則性についてフラクタル解析等を用いて検討を進めている。予備的な結果として、これらのパターンには自己相似的な成分が含まれており、このような多様なコミュニケーション信号を生成する際に、無秩序にそれらが生成されるのではなく、共通するシステムを基盤として生み出される可能性があることが示唆される。今後は、実際のパターンから抽出されたフラクタルパターンをベースにして人工的なリズムパターンを生成し、それらに対する反応を実験的に観察する予定である。 なお、顔認識の研究は、インドで開催された国際シンポジウムにおいてポスター発表賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って順調に研究が進展している。残り半年ではあるが、予定していた計画の大半は完遂することができる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
残り半年の研究期間で、全体の計画を完成させるべく鋭意指導する。得られた成果については順次論文としてまとめて公表する矛定であるが、この点については、問題はない。また、期間終了後についても、別経費での研究員等としての雇用の道をさぐり、Dahl氏のキャリアパスのサポートを図りつつ、研究室の活性化にも資するよう努力したい。
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