研究課題/領域番号 |
10F00324
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺杣 友秀 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授
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研究分担者 |
李 忠華 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 多重ゼータ値 / モチーフ / 超幾何関数 |
研究概要 |
(1)ガンマ級数の鏡影公式は正規化された二重シャッフル関係式から導かれることを証明した。実際これは二重ゼータ関数の制限和公式からの帰結である。その結果、正規化された二重シャッフル関係式から重みが偶数のオイラーの関係式を含む、ある評価公式が導かれる事を証明した。またLe-Murakami関係式も正規化された二重シャッフル関係式から導かれる。 (2)多重ゼータ星値の双対に関する大野-金子予想を証明した、実際、この式を導く超幾何関数3F2の変換公式を導く。この変換公式をを用いることにより、ゼータ星値の与えられた重さ、深さ、高さにかんする和の母関数の差をガンマ関数で表すことができる。 (3)3F3のある変換公式を用いることにより、indexがひとつだけ3で他が2の場合の多重ぜーた値のZagierによる評価公式の別証明を与えた。この評価公式はブラウンのホフマン予想の証明で重要な役割を果たす。 (4)混合テイトモチーフに関して、Bloch-Krizの構成法でとくにpolylog motifの計算に使えるような理論に書き換えることをおこなった。これは木村氏と花村氏との共同研究である。3つ組みについて理論を構築すること、カレントの制限あるいはそれに代わる理論について研究した。主に抽象的な部分としてドラム次元とベッチ実現を解析的実現で比較する構造をもとに微分次数代数、すなわちDeligne代数と呼ばれる微分次数代数を構成して、その代数に関するバー複体が混合テイトホッジ構造を分類するホップ代数となることを用いて、サイクル微分次数代数からDeligne微分次数代数への代数準同型が存在するところから実現関手を構成した。その応用としてポリログ余加群に対するホッジ実現が実際に周期としてポリログが現れることをしめした。これはブロックとクリズの論文における不完全なてんを補ったものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
この分野で懸案であった双対公式に関する大野-金子予想ができたことは大きな進展である。また一連の重要な関係式が二重シャッフル関係式と超幾何関数の変換公式から得られていることがわかり、例えばブラウンのドリーニュ予想の証明に新しい解釈を与られることがわかった。これはおおきな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
多重ゼータ値の一連の公式がモチーフ的に証明されるかという問題があるが、アソシエータ関係式はモチビックであることが知られているので、これはブラウンのドリーニュ予想の解決から一歩先の結果を導くことが期待される。この方面で一連の予想が解決される可能性がある。 混合テイトモチーフとの関係から、その実現関手を厳密に定義することも今後の研究に欠かせないことである。そのためにも周期積分に現れる対数積分の収束性の確かめ、一般化されたコーシーの公式を正当化すること、moving lemmaを局所有限サイクルに対しておこなうことが当面の課題となる。
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