本年度は揺動の非ガウス性について主に研究を行った。ガウス過程は中心極限定理により、ポアソーン過程で生じるノイズを長時間平均することにより生じることが知られているが、平均化する時間を短い時間に限るとガウス分布からはずれる。まず短時間平均での分布がどのようになるか数値的に確認した。次にその場合に対する高次のモーメントを与える式を解析的にもとめ、高次のモーメントがガウス分布からはずれるさまを確認した。さらに平均化する時間をのばしていくと求めた結果がガウス的に漸近的に近づくさまを確かめた。そのふるまいを平均化の時間間隔とモーメントの値を両対数プロットして調べたところ、各次数のモーメントが、平均化時間を10ポアソーン過程程度になったときにガウス型に近づいていくことを発見した。モーメントだけではなく、分布関数がガウス型からずれていくさまも解析的に求めようとしたが、これは困難であった。かわりにガウス分布を補正する形として分布関数を近似する形を求めている。以上の結果を導くにあたり多くの数学的恒等式を導いた。それらの結果について1本、またそれらの結果を久保振動子や揺動のある二準位系の問題に適用した結果で1本論文を執筆中である。非ガウス分布についてこれまでその重要性は知られていたが、ここまで解析的に研究した例はない。また、それを物理的な問題として応用解析したのも本研究が初めてである。これらの問題は生物系の光合成過程を研究する上で不可避であり、今後この光合成を研究するにあたり重要なステップになると期待される。
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