研究概要 |
バイオセンサーの代表例として表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた方法が広く利用されている。一方、SPRと同様に基板表面への試料吸着に伴う屈折率変化を利用する方法として、金属基板/誘電体の二相から構成される光導波路センサーも報告されている。誘電体相にポーラス材料を用いて光導波路として利用すれば、SPRや従来の均一な誘電体を用いた光導波路に対し、試料が吸着するセンサー表面の表面積を著しく増大でき、飛躍的な高感度化が期待できる。本研究では、メソポーラス膜を誘電体とすることで光導波路センサーのさらなる高感度化を図る。光導波路構造の最適化を図ると共に、メソポーラス膜の化学修飾により、アプタマーを用いたタンパク質の高感度検出やオリゴDNA(RNA)を用いたnon-coding RNAの高感度検出を目指す。 本年度はメソポーラスシリカを包含した陽極酸化アルミナ膜について、焼成のときに生じやすい空隙欠陥を取り除くこと、また、メソポーラスシリカのメソ細孔サイズの制御をまず試みた。メソポーラス材料作製のための鋳型としてP123(EO_<20>PO_<70>EO_<20> ; EO : poly (ethylene oxide), PO : poly (propylene oxide))を用い、P123 2.0g,エタノール30g,濃塩酸0.2g,水4g,TEOS (tetraethyl orthosilicate) 4.26gを基本組成とし、LiC1 0.087gの有無とTMB (1,3,5-trimethylbenzene)の含有量(0.5, 1.0, 1.5g)を変数として組成を変えた前駆体溶液を用いてメソ材料を合成し、そのキャラクタリゼーションを走査型電子顕微鏡観察と窒素吸脱着実験により行った。その結果、LiC1存在下、TMBが無い場合には円形状の構造が得られたが、それ以外では円柱状または中空キャピラリー状のメソ構造が得られた。鋳型としたP123ブロックコポリマーの除去に伴う構造変化が生じるかどうかを今後検討する予定である。
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