研究課題/領域番号 |
10F00342
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺前 紀夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授
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研究分担者 |
GUO Limin 東北大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | バイオセンサー / 光導波路 / メソポーラス材料 / 陽極酸化アルミナ / 核酸 |
研究概要 |
バイオセンサーの代表例として表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた方法が広く利用されている。一方、SPRと同様に基板表面への試料吸着に伴う屈折率変化を利用する方法として、金属基板/誘電体の二相から構成される光導波路センサーも報告されている。誘電体相にポーラス材料を用いて光導波路として利用すれば、SPRや従来の均一な誘電体を用いた光導波路に対し、試料が吸着するセンサー表面の表面積を著しく増大でき、飛躍的な高感度化が期待できる。本研究では、メソポーラス膜を誘電体とすることで光導波路センサーのさらなる高感度化を図る。光導波路構造の最適化を図ると共に、メソポーラス膜の化学修飾により、アプタマーを用いたタンパク質の高感度検出やオリゴDNA(RNA)を用いたnon-coding RNAの高感度検出を目指す。 昨年度はメソポーラスシリカを包含した陽極酸化アルミナ膜について、焼成のときに生じやすい空隙欠陥を取り除くこととメソ細孔サイズの制御をまず試み、いくつかのメソ材料を合成し、そのキャラクタリゼーションを走査型電子顕微鏡観察と窒素吸脱着実験により行った。本年度は、アルミナ細孔への前駆体の減圧導入とメソポーラスシリカの気相合成において、鋳型となる界面活性剤の種類やメソポーラスシリカ形成時の温度などを実験パラメーターとして包括的に作成条件と形成するメソ構造を詳細に検討した。 鋳型となる界面活性剤としては、イオン性のセチルトリメチルアンモニウム(CTAB)及び非イオン性でエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体であるF127とP123の両者を用いた。なた、0.2M塩酸酸性溶液における各界面活性剤の濃度と塩酸の濃度比(質量比)を順次変え、かつ気相合成時の温度も段階的に変えて形成したメソ細孔の構造を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、窒素脱吸着により評価した結果、検討した合成時の実験パラメータにより種々の特徴的なメソ構造を形成できることが分かった。イオン性のCTABを用いた場合には、質量比18%では1次元メソ細孔を有するカラムナーヘキサゴナル構造が形成されるが、低質量比ではサーキュラーヘキサゴナルとワーム様構造が混在し、低質量比になるほどワーム様構造の混在割合が増加する。一方、高質量比となるとサーキュラーヘキサゴナルとその中心部分にカラムナー構造ができる二種類の構造が混在するようになる。F127を鋳型に用いた場合にはいずれの実験条件でもキュービック構造が観測された。P123を鋳型とした場合には、質量比と気相合成温度の両者によってメソ構造は変化し、サーキュラーヘキサゴナルの逆転写構造、ラメラー構造、カラムナーヘキサゴナルの逆転写構造、シリカナノ粒子が細密充填した構造など、特徴的な構造を作り分けることに成功した。次年度以降は本年度確立した合成手法に基づきメソ細孔膜を作成し、その応用を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気相合成により、欠陥のないメソ材料の作製を可能とした。また、網羅的条件探索により、作成条件を調整することによって特徴的構造の作り分けを可能とし、応用研究展開の礎が確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
メソ構造の作り分け方法を確立したので、タンパク質やオリゴ核酸などの高分子量の生体分子を取り込む孔径の大きなメソ材料作成法開発へ展開し、応用を図る。
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