ピリジン-ボラン錯体はその炭素類縁体と等電子構造であり、炭素体とは酷似した立体構造を有する。その一方で電子的性質は大きく異なり、極めて低いLUMOを示すこと、また、これらは強い蛍光を示すことを既に我々は見いだしている。このため、有機ELの発光材料や電子輸送材料など、機能性材料としての応用が期待されている化合物群である。本研究ではフルオレニルアニオンと等電子構造となるピリジン-ボラン錯体のホウ素アニオンが芳香属性を持ち、比較的安定で単離・解析することが可能ではないかと考え、検討を行った。まずホウ素上に塩素原子を有するフルオレン型ピリジン-ボラン錯体2-(2-クロロ(フェニル)ボリルフェニル)ピリジン)に金属リチウムを作用させたところ、無色から青紫色、次いで赤色へと反応溶液の色が変化した。この溶液をNMRで分析したところ、芳香族領域のプロトンおよびカーボンの値が高磁場シフトしているのが観測された。また11B NMRでは22ppmにピークが観測された。これはこれまでに報告されている芳香族ホウ素アニオン(ジベンゾボロール-N-ヘテロサイクリックカルベン錯体のアニオン)の値と同程度である。この結果から、金属リチウムによるピリジン-ボラン錯体の還元反応が進行し、ホウ素アニオンが生成していることが示唆された。続いて、得られた赤色溶液にヨードメタンを作用させたところ、赤色が消失し、2-(2-メチル(フェニル)ボリルフェニル)ピリジンが生成した。これはホウ素アニオンがヨードメタンに求核付加した結果得られたものと考えられる。
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