研究概要 |
平成22年度では、本研究計画の第1段階として、介護・医療用センサーネットワークに関する課題を整理し、無線監視システムの構造、物理ターゲットのカバレッジとモビリティ対応の基本的な課題を解決することが目的である。 監視システムの構造としては既存の研究を広く調査した結果、フラットな構造よりも階層的な構造を取ることが考えられる。また、センサとシンクのモビリティによる物理ターゲットのカバレッジへの影響について検討し、遅延などの負の影響を回避する一方、移動による負荷の分散によってネットワークのライフタイムを向上できる利点を生かすことが可能である。具体的な検討内容は以下の通りである。 まずはシンクがただ一つ存在する時のシンク・モビリティの問題について検討を行い、そのための多項式時間最適化アルゴリズムを開発した。本研究の独創的な点は、オリジナルの問題を、タイムドメインからロケーションドメインに変換したことにある。これにより、シンク・モビリティ問題を高効率に解決する新たな方法が得られた。 また、このような変換方法を、単一シンクから複数のシンクへ適用した。これを基に、列生成(Column Generation, CG)ベースのアルゴリズムを開発し、元の最適化問題を2つの関連するサブ問題に分解することが可能となった。この2つのサブ問題を繰り返し解決することで、最適解に近づくことができる。提案アルゴリズムに性能の保証を与えたことが本研究の貢献である。 さらに、開発されたCGベースのアルゴリズムは、比較的複雑度が高いため、緩和技術を基にして、ネットワークライフタイムの上限を把握するための多項式複雑度を有するアルゴリズムを開発した。CGベースのアルゴリズムと比較することで、本アルゴリズムの有効性を証明した。
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