研究概要 |
本研究の上位目的は会話を通して人間ユーザの意志をより上手に読み取り場面に合った反応をし,自然言語処理,人工知能,そして人間機械相互作用の分野に踏み込む研究である.そのためコンピュータに感情的知性を持たせなければならない.その中,感情状態の認知,推察,感情の適切性および原因の理解他さまざまな機能が必要であるといわれている.これまでの感情処理における研究では感情認知の技術のみに重きが置かれてきた現状である.これからは感情的知性の全範囲をコンピュータに導入するため研究を進めることを目標としている.研究期間内の具体的な目的としては,言語処理の研究方法を用いてユーザの言語行動(会話ストラテジー)を観察することによって感情状態をより深く理解し,その原因を予測できるエージェントの開発を計画している.そのためには,インターネットから大量コーパスおよび自然会話コーパスを取得し統計的に処理させ,どの会話ストラテジーがどの感情を起こすか,その原因および適している場面を確認し,言語モデルを構築したい.23年度には,文中パターンを抽出するシステムを構築した.それを現在応用し,感情種類別の感情文パターンのリストを収集したうえ,対話エージェントの応答テンプレートに応用する予定である.対話エージェントの応答文には,ユーザとの対話歴における感情変更の記録及び,会話戦略の記録をクロスリファレンスし応答を行う予定である.また,対話エージェントを構築した後評価を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的では,言語処理の研究方法を用いてユーザの言語行動を観察することによって感情状態をより深く理解し,その原因を予測できるエージェントの開発を計画している.これまでの研究では,自然会話コーパスの他インターネットから大量のブログ記事コーパスを取得した。インターネットから取得したコーパスは56億語を含み,現在日本語の一番大きいブログコーパスだと考えられる.その大きさのため一般的なコーパス処理ツールは利用できず,個別なアプローチを考えなければならなかった.そのアプローチにはまずコーパスを小部分に分けコーパス処理ツールによってインデクシングを行った.またコーパスへ検索を行った後,注釈情報(形態素解析,構文解析,感情情報など)を外部データーベースから抽出する形となっている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は感情種類別の感情文パターンのリストを収集したうえ対話エージェントの応答テンプレートに応用する予定である.対話エージェントの応答文にはユーザとの対話歴における感情変更の記録及び会話戦略の記録をクロスリファレンスし応答を行う予定である,また対話エージェントを構築した後評価を行う予定である.その中の問題点としては特にエージェントの応答文の生成時間が長いことは考えられる.応答文生成に利用するコーパスは大規模のためコーパスへの検索の他に文テンプレートの自動生成,感情スコア計算等を含めたうえすべてのリソースを使った場合応答文の生成時間は5分までかかり,エージェントとのリアルタイム会話は難しくなることが予測される.対応策としては,リソース(応答文生成に使うコーパス)を一番頻繁に使われる部分だけに制限し,検索時間を短くすることが考えられる.しかし,その場合は適宜応答のできないユーザの入力文が多くなるので,バランスを取ったリソース制限の仕方を応用しなければならない.そこは単語の頻度やTF-IDF手法などが考えられる。
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