ニッケル基合金は高温強度に優れ、耐高温強度が要求されるジェットエンジンやガスタービンのブレードなどに広く使用されている。しかしながら、昨今のさらなる熱機関のエネルギー高効率化やCO2削減などの環境負荷低減への要請から、材料には一層の高温強度の向上が求められている。昨年度までは、一般的な結晶材料の高温変形の支配方程式を獲得することを目的として、系を比較的高温に置くことで、クリープ変形を加速させた分子動力学解析を行い、クリープ変形を支配している素過程を抽出し、それが熱活性化過程に支配されていることを用いて、様々な温度や応力下でのクリープメカニズムを説明することに成功した。本年度は本解析を、ニッケル基の合金に適用した。具体的には、ニッケル基合金のナノ部材の引張り変形解析を行った。その結果、部材サイズによって変形様式が相変態によるものから双晶形成によるものに遷移するなど、強い部材サイズ依存性を示すことが分かった。また、これとは別に、昨年度までの研究では、粒径を構造を特徴づける唯一の長さパラメータとして検討を進めてきたが、近年、双晶を粒内に組み込んで強度と延性を両立させる実験結果が多数報告されつつある現状を踏まえて、粒内に双晶を人工的に埋め込んだモデルを作成し、その双晶の幅を新たなパラメータとして、クリープ解析を実施した。その結果、双晶を有する結晶は双晶がない結晶に比べてクリープ強度が大きく向上することが分かった。
|