研究課題/領域番号 |
10F00388
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保田 純 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授
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研究分担者 |
LI Yanbo 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 水素 / 光触媒 / 光電気化学 / ナノ構造 / 窒化物 / 水分解 |
研究概要 |
ナノ構造体の構築手法を光触媒・光半導体電極材料の研究開発に取り入れ、より高性能な光触媒・光半導体電極材料の開発を行う。規則正しい形状からなる半導体のナノ構造体は、光励起キャリアの分離を促進する機能を作り込める可能性が高く、デバイス応用のみならず光触媒・光半導体電極材料としての応用も期待できる。昨年度はTa3N5のナノワイヤー作製およびその光電気化学特性の評価を行った。Ta3N5のナノワイヤーはTa板上にAl金属膜を真空蒸着法によって成膜し、陽極酸化することによってポーラスアルミナ層を形成、さらに陽極酸化を続けることによりポーラスアルミナ層をマスクとしてポーラスアルミナ層の下にポーラスな酸化タンタルが得られる。ポーラスアルミナ層をリン酸を用いて除去することにより酸化タンタルのナノワイヤーが得られる。この得られた酸化タンタルをアンモニア気流下で焼成して窒化処理することによりTa3N5のナノワイヤーが得られる。今年度は前年度までに得られたTa3N5ナノワイヤーのさらなる窒化条件の最適化および表面修飾を主に行った。窒化処理はアンモニア気流下で高温で熱することにより行われるが、その処理温度を850℃から1000℃まで上げることにより光電流値がおよそ3倍まで増加することを見出した。表面処理としては酸素生成触媒であるIrO2コロイドをTa3N5ナノワイヤーに担持すること、およびBaドーピングを検討した。IrO2コロイドの担持により光電流値が増加することが確認され、Baをさらにナノワイヤー表面にドープすることにより約2倍に光電流値が増加した。以上のように、半導体ナノワイヤーを用いた水分解光触媒システムの開発を行った。来年度は水分解反応の評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と比較して水分解に起因する光電流値が大幅に増加しており、また、新たな知見が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においてこれまでに既報のものと比較して格段に高効率な水分解光電流が得られている。一方で、長時間安定に反応を進行することが課題として残されている。今後は酸化コバルトや酸化マンガンといった酸素生成所触媒を担持することにより、正孔を自己酸化ではなく水の酸化反応に向けるとともに、原子層堆積法(ALD法)のような精密コーティングを駆使して安定性の向上を目指す。また、水分解反応の精密解析も併せて行う。
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