研究課題/領域番号 |
10F00403
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大村 三男 静岡大学, 農学部, 教授
|
研究分担者 |
張 嵐翠 静岡大学, 農学部, 外国人特別研究員
|
キーワード | カロテノイド / キサントフィル / カンキツ / 遺伝子発現 |
研究概要 |
ウンシュウミカンのフラベド(果皮部分)には多量のカロテノイドが蓄積する。その中でも、'宮川早生'の枝変り品種である'山下紅早生'のフラベドには、赤色のアポカロテノイドであるβ-シトラウリンが含まれており、鮮やかな紅色を呈する。しかし、これまでβ-シトラウリンの生合成経路は不明であり、その蓄積メカニズムは解明されていない。そこで、本研究では'山下紅早生'に含まれるβ-シトラウリンの生成に関与する酵素遺伝子を単離し、その集積メカニズムを明らかにすることを目的とした。前年度まで、'山下紅早生'におけるβ-シトラウリン含量の季節変動を調査し、さらに、'宮川早生'とカロテノイド含量・組成およびカロテノイド関連遺伝子の発現の季節変化を比較した。その結果、'山下紅早生'では成熟に伴いβ-シトラウリンが急速に増大した。また、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析を行ったところ、このβ-シトラウリンの増大に伴い、カロテノイド代謝分解に関わる遺伝子の発現が上昇した。この遺伝子の発現上昇は、果実の成熟期間中、'宮川早生'で低いままで推移するのに対して、'山下紅早生'では増大していた。また、本年度は、このカロテノイド代謝分解のプロモーター領域の塩基配列を'山下紅早生'と'宮川早生'で比較したところ、両品種で異なる領域が認められた。また、機能解析として、ゼアキサンチンを生成する大腸菌にこのカロテノイド代謝分解に関わる遺伝子のcDNAを導入したところ、β-シトラウリンを生成した。以上の結果から、'山下紅早生'のβ-シトラウリン生成は、本研究にて単離された新規のカロテノイド代謝分解に関わる酵素遺伝子の発現上昇によることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、山下紅早生'のβ-シトラウリン生成に関わるカロテノイド代謝分解酵素遺伝子について、プロモーター領域の塩基配列の解析および機能解析を行った。従って、今年度の研究目的をほぼ達成できたと考える。また、他のカロテノイド合成に関わる遺伝子の機能解析も行い、1編の論文を執筆し、受理されたことから、当初の計画以上に研究が進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、山下紅早生'のβ-シトラウリン生成に関わるカロテノイド代謝分解酵素遺伝子を単離し、遺伝子発現解析、プロモーター領域の塩基配列の解析および機能解析を行った。今後、さらに、このβ-シトラウリン生成に関わるカロテノイド代謝分解酵素の機能を詳細に解析し、どのカロテノイドを基質として、β-シトラウリンを生成するのか調査を行う。また、プロモーター領域の塩基配列から、'山下紅早生'の枝変わりの原因を解明する。以上のような、より詳細な機能解析およびプロモーター解析を行うことにより、カンキツにおけるβ-シトラウリンの生合成経路およびその集積メカニズムを明らかにする。
|