研究概要 |
クルマエビ資源の動態に関する研究に先立ち,初年度は八代海南部出水市の砂質干潟において経時的・定量的に採集されたクルマエビのポストラーバと稚エビ,およびその他の魚類,甲殻類,軟体類の標本から得たデータを用いて,同干潟域の底棲動物群集における種組成,優占種,生息密度,時空間分布について検討した。その結果,上位優占種はイボキサゴ(軟体類),ユビナガホンヤドカリ(甲殻類),クロイサザアミ(甲殻類),ヒメハゼ(魚類),ウリタエビジャコ(甲殻類)で,クルマエビは第7位に位置した。空間的には岸から沖にかけての成帯構造が確認された。標本採集期間を通じて種数,多様度ともに漸減傾向がみられた。イボキサゴが大きく増加した2004年以降とそれ以前のラネル別種組成のデータを用いてクラスター分析を行ったところ,2001年から2003年は岸側と沖側の2グループ,2004年から2007年は岸側,中央,沖側の3グループに分かれた。また,多様度指数と底質(粒度)との関連が示唆された。 さらに,クルマエビ科の中でも寿命が短く,成育場としての砂質干潟の利用が見られない種であるサルエビの,鹿児島湾における時空間分布についても解析を行った。その結果,着底後の新規加入個体は広範囲に分布するものの,翌年の繁殖期には成熟個体が一部の水域に集中分布することがわかった。また,産卵場の範囲が1990年代に比べて現在では狭くなっていることも示唆された。 今年度の研究結果を踏まえ,干潟域におけるクルマエビの生残率を含めた個体群の動態機構の解明を行いたい。
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