研究概要 |
バベシア症は、ダニによって媒介されるバベシアが宿主動物の赤血球に寄生して、発熱、貧血、黄疸等の症状を呈する原虫感染症であり、家畜や犬などで世界的に認められており毎年数兆円にのぼる経済的被害をうけている。本研究では、家畜バベシア症に対する新規の迅速・簡便遺伝子診断法の開発と新規治療薬の検索を目的に、以下の項目について検討した。 1)迅速・簡便遺伝子診断法の至適条件の検討 牛バベシアB.bovisのRAP-1、BV5650及びSBP2遺伝子を用いて、新規の等温遺伝子増幅法であるHelicase dependent amplification (HAD)法に用いる最適なプライマーの設計を行った。今後、温度、プラーマーの種類・濃度についてHAD法による遺伝子増幅の最適な条件を検討する。 2)アピコプラストをターゲットにした新規治療薬の検索 新たな薬剤標的として大きな関心を呼んでいるアピコプラストと呼ばれる植物由来の葉緑体が原虫に存在する事が近年明らかとなっている。本年度は、アピコプラストの機能を阻害するciprofloxacin(DNA合成阻害)、thiostrepton(DNA転写阻害)、rifampicin(RNA翻訳障害)および遅効性の原虫薬と知られているclindamycinと共に、バベシアの培養系に加え、その増殖抑制効果を検証した。その結果、ウシバベシア(B.bovia, B.bigemina)およびウマバベシア(B.equi, B.caballi)に対して、2.5~15.8μM (ciprofloxacin), 1.6~11.5μM (thiostrepton)、4.1~12μM(rifampicin)の範囲でのIC_<50>値を示し、その効果は即効的であった。またマウスを用いた感染実験で、thiostreptonは対照群に比較し、顕著な増殖抑制効果を示した。
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