研究課題/領域番号 |
10F00420
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研究機関 | 国立大学法人帯広畜産大学 |
研究代表者 |
横山 直明 国立大学法人帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 准教授
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研究分担者 |
ABOULAILA MahmoudR.A. 国立大学法人帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 外国人特別研究員
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キーワード | バベシア / 迅速・簡便 / 新規遺伝子診断法 / アピコプラスト / 薬剤標的 |
研究概要 |
バベシア症は、ダニによって媒介されるバベシアが宿主動物の赤血球に寄生して、発熱、貧血、黄疸等の症状を呈する原虫感染症であり、家畜や犬などで世界的に認められておりで毎年数兆円にのぼる経済的被害をうけている。本研究では、家畜バベシア症に対する新規の迅速・簡便遺伝子診断法の開発と新規治療薬の検索を目的に、以下の項目について検討した。 1)新規の迅速・簡便遺伝子診断法の開発 B.bovisのゲノムデータベースより他の類似原虫と相同性が認められないP67遺伝子を探索し、その遺伝子情報を基にPCRおよびnPCRを実施した。その結果、高い特異性と感度(fgレベルのDNA濃度で増幅可能)が得られた。また、B.bovisのBbSBP-4蛋白質は赤血球内のバベシア原虫のスフェリカルボディから赤血球細胞質を通して赤血球外に放出されることが明らにされた。更に、組換えBbSBP-4蛋白質を用いたELISAではこれまで報告されている抗原の中で最も高い特異性と感度をもっていることが,流行地で採取された血清サンプルを用いた検討により示された。 2)アピコプラストをターゲットにした新規治療薬の検索 新たな薬剤標的として大きな関心を呼んでいるアピコプラストと呼ばれる植物由来の葉緑体が原虫に存在する事が近年明らかとなっている。昨年は、アピコプラストの機能を阻害するciprofloxacin(DNA合成阻害)、thiostrepton(DNA転写阻害)、rifampicin(RNA翻訳障害)が牛及び馬バベシアの増殖を抑制することを明らかにした。本年度は、この増殖抑制効果を更にreversetranscription-PCR及びウエスタンブロット法を用いて確認した。また、アピコプラストの重要な酵素であるペプチド脱ホルミル酵素の阻害剤であるアクチノニンを用いて、バベシアに対する影響を検討した結果、牛及び馬バベシアに対して増殖抑制効果があることが明らかにきれた。これらの結果は、アピコプラストがバベシアの薬剤標的として非常に有望であることを示唆しており、評価の高い国際専門誌であるAntimicrobial Agents and Chemotherapyに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最初の目的である新規診断法に関し、B.bovisにおける新規のP67遺伝子の検索に成功し、この遺伝子を用いたPCRおよびnPCRの確立に成功した。また、2番目の目的であるアピコプラストをターゲットにした新規治療薬の検索に関しても、アピコプラストDNA合成、DNA転写、RNA翻訳の阻害剤によるバベシアの増殖抑制を明らかにすると共に、アピコプラストの重要な酵素の阻害によっても、原虫の増殖が抑制されることを明らかにし、当初の目的を達成するために着実に研究成果を挙げている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの新規診断法の開発並びにアピコブラストをターゲットにした新規治療薬に関し、診断法の野外での応用、治療薬の実用化の可能性について検討する。 1)P67遺伝子を標的としたPCRおよびnPCRの実用性について、流行地でのDNAサンプルを用いた検討する。 2)アピコプラストのペプチド脱ホルミル酵素阻害剤のアクチノニンに関し、実験的バベシアマウス系を用いその増殖抑制効果について検討する。
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